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東京地方裁判所 昭和24年(行)25号 判決

原告 井田力

被告 三田村農業委員会・東京都農業委員会

一、主  文

被告三田村農業委員会(農業委員会法施行前の三田村農地委員会)が別紙目録の土地について昭和二十三年十月二十七日定めた宅地買収計画を取り消す。

前項宅地買収計画に関する原告の昭和二十三年十一月二十七日附訴願に対して被告東京都農業委員会(農業委員会法施行前の東京都農地委員会)が昭和二十四年三月二日した訴願棄却の裁決は取り消す。

訴訟費用は被告等の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、請求の原因として、次のとおり述べた。

被告三田村農業委員会(農業委員会法施行前の三田村農地委員会、以下すべて農業委員会と呼ぶ)は昭和二十三年十月二十七日原告所有の別紙目録の宅地について、旧自作農創設特別措置法第十五条第一項第二号を適用して、宅地買収計画を定めた。

この点に関する三田村農業委員会の認定は次のとおりである。訴外関根元次郎は自創法第三条の規定により買収する農地である東京都西多摩郡三田村二俣尾上生原八百六十七番畑四畝六歩、同村滝振畑五百二十一番田二畝四歩、同村滝振畑四百六十二番の二畑九畝二十八歩の内五畝二十歩について自作農となるべき者で、本件宅地をも賃借しておつて、三田村農業委員会に対し右宅地買収の申請をした。関根元次郎が右農地につき農業経営を行うためには本件宅地は作業場等として必要欠くべからざるものであるので、三田村農業委員会は、関根の右申請を相当と認めて右買収計画を定めた。以上が三田村農業委員会の認定である。

しかし右農地は自創法第三条によつて買収できる農地には当らず、関根は自作農として農業に精進する見込のある者ではない。また関根は本件宅地に賃借権をもつている者でもない(原告は本件宅地を関根に使用貸借契約によつて貸していたが、昭和二十一年十月中旬頃関根に対し右契約を解除する旨の意思表示をした。)関根が本件宅地につき買収の申請をしたことも否認する。要するに本件宅地は自創法第十五条第一項第二号の宅地には当らない。

本件買収計画は自創法第十五条第一項第二号の要件を備えない違法なものであるので、原告は同年十一月九日被告三田村農業委員会に異議の申立をしたところ、同委員会は同月二十三日異議申立を却下する旨の決定をし、その決定は間もなく原告に送達された。原告は右決定に不服であつたので同月二十七日被告東京都農業委員会(当時の東京都農地委員会、以下すべて東京都農業委員会という)に訴願したところ、同委員会は昭和二十四年三月二日訴願棄却の裁決をし、その裁決書は同年十一月末原告に送達された。

自創法第十五条第一項第二号の要件を備えない前記宅地買収計画は違法であり、これを認容した被告東京都農業委員会の裁決も違法であるから、それらの取消を求める。

かように述べた(立証省略)。

被告等代理人は、原告の請求を棄却する旨の判決を求め、次のとおり答弁した。

被告三田村農業委員会が原告主張の日に原告所有の別紙目録の宅地について原告主張の根拠により宅地買収計画を定めたこと、原告がその主張の日被告三田村農業委員会に右買収計画に対する異議の申立をし、同委員会が原告主張の日異議申立を却下する旨の決定をし、その決定が間もなく原告に送達されたこと、原告がその主張の日被告東京都農業委員会に原告主張のとおり訴願をし、同委員会が原告主張の日訴願棄却の裁決をし、その裁決書がその後原告に送達されたことは、認める。

訴外関根元次郎は久しく本件宅地を木造建物所有のために賃借しその地上に居宅一棟建坪十五坪を所有しているものである。一方被告三田村農業委員会は、関根元次郎の小作している原告主張の農地につき不在地主の小作地に当るものとして農地買収計画を定めた。ところが、右農地の小作人で自作農として農業に精進する見込のある関根から昭和二十三年十月二日本件宅地買収の申請があり、かつ本件宅地が右買収農地の農業経営に必要であると認められたので、同委員会は、本件宅地買収計画を定めたのである。しかし今にしてみれば、右農地買収は法定の要件を欠いていたものである。従つて関根がこの点からいつて自創法第十五条第一項所定の自作農となるべき者でなかつたことは、敢えて争わない。

かように述べた(立証省略)。

三、理  由

被告三田村農業委員会が昭和二十三年十月二十七日原告所有の本件宅地について、旧自創法第十五条第一項第二号を適用して宅地買収計画を定めたこと、原告が同年十一月九日被告三田村農業委員会に右買収計画に対する異議の申立をし、同委員会が同月二十三日異議申立却下の決定をし、同決定が間もなく原告に送達されたこと、原告が同月二十七日原告主張のとおり被告東京都農業委員会に訴願し同委員会が昭和二十四年三月二日訴願棄却の裁決をし、同裁決書がその後原告に送達されたことは、当事者間に争いがない。

ところで、被告等の主張によると、宅地買収は訴外関根元次郎の申請によつて行われたものである。そして被告等主張の各農地は不在地主の小作地なりとして買収計画の対象となり、その小作人である関根元次郎はこれを買受けて自作農となるべき者と認められていたのである。

しかし、被告等主張の各農地について不在地主の小作地としての買収の要件が備わつていなかつたことは、今日被告等の認めるところであるから、関根は、「自創法第三条の規定により買収する農地に就き自作農となるべき者」には当らないわけである。

してみると、関根の申請によつて定めた本件宅地買収計画は、ほかの点の判断をまつまでもなく、違法であり、これを適法なりとして原告の訴願を棄却した被告東京都農業委員会の本件裁決もまた違法であるといわなければならない。

よつて原告の請求を正当として認容し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟特例法第一条民事訴訟法第八十九条第九十三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 新村義広 入山実 石沢健)

(目録省略)

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